会場が暗くなったかと思うと、身体に響く「ぶら(ほら貝)」の音。その音に続いて、「やれぎん(破れ着物)」姿の十五夜会のメンバーが足習(あしなれ)を唄いながら登場です。ティディンの音と楽しげな歌声と踊りに、会場は一気に奄美の熱気に包まれたようでした。
ステージで繰り広げられる八月踊りに、2階の客席では身を乗り出して見入る人も。5曲の唄と踊りに、すっかり奄美気分です。
そして、タナカアツシさんの三味線が響く中、朝崎郁恵が登場。拍手に導かれ、始まりに相応しく『ほこらしゃ』を披露しました。
そのあとは三味線唄が続きます。徳原大和と弟子の新原恭子の三味線で、『朝花』。こちらは徳原・新原の二人も歌声を聴かせてくれました。
そして、この日は珍しい唄が続きます。
『夕なぎ』と『かんつめ』は、あまり朝崎のライブでは歌われない曲。
特に『夕なぎ』はライブでは初、『かんつめ』はその曲の由来から、大勢の前では(特に夜には)歌われない曲だと、朝崎自らお客さんに説明します。
『夕なぎ』は物哀しい恋の歌で、「夜明けに雲が離れて散っていくのを見ると、まるで自分たち(恋人)のようだ」といった内容の唄です。淋しげな三味線の音にあわせて歌い上げます。
『かんつめ』は、悲恋の物語として受け継がれるシマ唄。「やんちゅ(いわゆる奴隷。貧農の家で身売りした女性のこと)」のカンツメは、その美しさゆえに主人に目をかけられ、本当に愛する人と結ばれずに非業の死を遂げた女性でした。そのため、今でもこの『かんつめ』は唄うこと・話すこと自体をタブーとするほどの物語で、このようなライブの場で唄われることは珍しいのです。
「あなたの夜は明けるけど、私の夜は暮れていく」
「塩をなめて水をなめてこの世を終わった」
という歌詞が、本来の『かんつめ』の歌詞にあるのですが、これはちょっと可哀想なので
「かしがでぃ愛(かな)しゃる縁(いん)ぐゎば結(むす)でぃ
暮らち暮らさらん時(とぅき)んな
鳥(とぅり)む通わぬ島行(い)じ暮らそ」
(あなたと私はこんなにこんなに愛しているのにこの世では一緒になれなかった。
あの世に行って、二人で一緒になろうね。一緒にくらしましょう。
縁が結ばれるといいな。同じ道を行きたい。)
という歌詞を選んだと言う朝崎。
こういうところが、朝崎らしさ。
切ない声に、会場も静かに聴き入ってくれていました。お客さんの表情も、歌詞の意味を感じ取ってくれているようでしたよ。
朝崎の今回のトークは、先日行われたという「題名のない音楽会」リハーサルの話。三味線奏者・上妻宏光(あがつまひろみつ)さんのCDに参加したという話をする朝崎の表情からは、とても楽しかったことが伝わってきます。大好きな上妻さんのことを話すときは、本当にうれしそうなんですよね。
そしてこの日のメンバーであるキーボードのYancy(ヤンシー)さん、ベースのJIGEN(ジゲン)さん、和太鼓の内藤哲郎さん・そしてギターのタナカアツシさんらによる『しょうれん』『しょうらい』。和太鼓の音とギター・キーボードという異色の組み合わせながら、ドンドンと身体に響くリズムがビートを刻みます。『千鳥浜』『稲すり』『渡しゃ』も、切ない歌詞や豊作の歌詞が、低音で胸に迫ってくるよう。
「楽器を入れるとリズムに乗りやすいから唄いやすいんです」と朝崎。確かに、朝崎もお客さんも、みんなリズムをとって唄を楽しんでいます。
『諸鈍長浜』では、なんとYancyさんによりJAZZ風にアレンジされ、現代風の珍しい演奏となりました。そして最後は恒例の『六調』!朝崎も、お客さんもにこにこしながら踊ってました!
この日のお客さんはすごい熱気で、拍手が止みません。その拍手に伴われ、再びステージに出た朝崎一行は、アンコールで『おほくり〜ええうみ』を熱演。
ギターとベースの音がノスタルジックに流れるアンコールは、会場を静かに包み、ライブは幕を閉じたのでした。
--セットリスト--
オープニング
八月踊り(十五夜会)
<足習〜嘉鉄ぬいなくん主〜諸鈍長浜〜エーウミ〜今日ぬほこらしゃ>
1 ほこらしゃ
2 朝花
3 夕なぎ節
4 かんつめ
5 正月祝い唄(ショウレン)
6 ショウライ(正月ぎん)
7 千鳥浜
8 稲すり
9 渡しゃ
10 諸鈍長浜
11 六調
アンコール
12 おぼくり〜ええうみ








